前回は、鋳造に用いる鋳型のお話でした。
鋳型ができたら、次は溶かした金属を流し込むだけなのですが、その流し込み方にも種類があります。
地金を加工してジュエリーを作っている方なら、地金を溶かしてあけ型に流し込んだことがありますよね。
基本は、それと同じ要領です。
鋳込みとは、溶かした金属を鋳型に流し込むこと
ただ流せばいいんじゃないの?と思いますが、ジュエリーのように細かく繊細な形状ですといろんな工夫が必要になってきます。
重力(自重圧)鋳造・流し込むだけ
外から圧力を加えずに、重力にまかせて溶けた金属の自重で流し入れるだけなので、小さく細かいものを鋳造するのは難しい。
重力(自重圧)鋳造 Gravity casting
・押湯部分を設ける、空気の逃げ道を作る、などの工夫が必要
どの鋳込み方でも、押湯と呼ばれる、鋳型に余分に流し込む金属が必要。
押湯には、不純物を浮かせたり、金属が冷えて固まる時の収縮や空洞(巣)が鋳造物にできるのを防ぐ効果がある。
圧迫鋳造・水蒸気の圧力で流し込む
圧迫蓋(あっぱくがい)と呼ばれる、蓋を用い水蒸気の圧力で、溶けた金属が鋳型内に押し込む鋳造方法です。
重力(自重圧)鋳造よりも細かい鋳造が可能。
以前は、彫金工具やさんのカタログにも載っていた、圧迫蓋(あっぱくがい)ですが、最近は探しても見つからない。
メルカリとかで、時々出品されているのを見かけますが…
実際、銀の溶け具合の見極めとか、加減が難しい鋳造法なので、石膏の鋳型を作る設備を整えたのなら、遠心鋳造機で鋳造するほうが無難。
なので、廃れていったのだろうとおもう。
圧迫鋳造 Steam casting
・石膏の鋳型を用意する
・湯溜まりに金属を置き、バーナーで溶かす(溶かした金属を流し込むのも可)
・溶けた頃合いをみはからって、圧迫蓋でおさえこむ
・圧迫蓋の内側のロックウールが熱せられ発生した水蒸気の圧で、銀が鋳型に押し込まれる
専用の圧迫蓋がなくても、水分を含んだもので蒸気を逃さないように蓋をすれば理屈では鋳造が可能ですが、危ないのでおすすめはできないです。
まっすぐしっかり蓋をかぶせないと、水蒸気が吹き出して危なそうですが、
↓こちらの動画を見るとできそうな気がしてきますね。
遠心鋳造・遠心力で流し込む
溶けた金属を遠心力で、鋳型に流し込む鋳造方法です。
個人の彫金作家さんなど、遠心鋳造をされている方はわりといるので、情報を得やすい鋳造方法ですね。
遠心鋳造 Centrifugal casting
・石膏の鋳型を用意する
・遠心鋳造機にるつぼと鋳型をセットする
・るつぼに金属をいれバーナーで溶かす
・金属が溶けたタイミングで、ストッパーをはずずと、遠心鋳造機がくるくるまわり、遠心力で溶けた金属が鋳型の中に入る
遠心鋳造機には、横回転のものと縦回転のものがあります。
縦回転のものの方が、場所をとりませんが溶けた金属が飛ぶと危ないです。縦でも横でも飛び散ることがあるので、専用のカバーは必要です。
るつぼや鋳型用のステンレスリングは、それぞれの遠心鋳造機に対応しているサイズがあります。
【中古】【未使用・未開封品】グローバルデンタル ムカミ 遠心鋳造機装置 十字架フラスコ JT-08 価格:69037円 |
その他の流し込み方
吸引、真空、加圧、それらの複合鋳造機などいろんな種類があります。
なかなか個人が自宅でそこまで設備を整えることはないと思うので、詳しいことは割愛します。
まとめ
溶けた金属を型に流すだけの方法から専用の機械まで、設備を整えるほど安全に精密に鋳造作業ができるようになります。
使用金属、生産量に応じて、外注するのか、自分でするのか…
私自身は生産量も少ないですし、
電気代やら、埋没材、細かい消耗品のランニングコストと、鋳造作業にかかる時間や手間を考えると、鋳造は外注する一択です。
その分、原型製作の方に時間とエネルギーを注げますしね。
ただ、鋳造という作業自体は面白いですし、一貫して一から十まで作る喜びもありますよね。
2回にわけて、鋳造についてお話ししてきましたが、やっぱり自分で鋳造するのは無理。
と、思った方は外注してみてください。
基本的に個人でも、一点からでも対応してくれます。
↓彫金工具を取り扱っているシーフォースさんのサイトです。鋳造以外の加工もあります。
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