きっと、ジュエリーを作っている方なら一度は、「自分で鋳造できないかな?」って思いますよね。
私もね、考えましたよ
・納期を気にしなくていい(12月の繁忙期とか)
・石付鋳造、現物鋳造など鋳造業者に断られる鋳造もできる
というメリットがありますから。
しかしですね
・機材などの初期投資が必要
・溶けた金属を流し込むという危険な作業をするための場所の確保
・地金の管理
・失敗を受け入れ、実験を重ねる気力
などなど、乗り越えなければいけない課題もあります。
そこで、私は、鋳造は設備が整っていて経験豊富な専門業者に依頼することにし、原型作りの方で自分の個性を出すことに時間をかけることにしました。
それでも、鋳造という作業そのものは興味深く面白いものですし、トライしてみたい方もいるかもしれませんので、自宅(安全を確保できる場所)でできそうな方法をまとめていきます。
鋳型の種類を素材別に紹介
そもそも、鋳造とは溶かした金属を鋳型(いがた)と呼ばれる型に流し込んで形を作る加工法です。
ですので、まずは型がないと始まりません。
そこでまずは、鋳型のお話。
ロストワックス鋳造では石膏が使われますし、インディアンジュエリーのサンドキャストもよく知られていますね。
現在、ジュエリーの鋳造のほとんどに石膏の型が使われていますが、ある程度機材を必要とします。
ここでは古くから行われている、できるだけ機材を用いない鋳造方法からご紹介していきますね。
コウイカの骨(カトルフィッシュボーン鋳造)
いきなりなんで烏賊の骨?
と、思われるでしょうが、古代ローマ帝国時代から地中海に面した国々ではメジャーな金工技法の一つなんだとか。
ちなみに、コウイカの骨は甲とも言い、実際には貝殻に似たものだそう。
インコなどの鳥に副食として与えることもあるらしく、案外手に入りやすい素材です。
Cuttlefish Bone Castung
・まず、骨の片面を平らにし、2つの片面または両面を任意の形に彫ります。
・スライス面を合わせて針金などで、しっかりとめる。
・溶けた金属を流し込みます。骨は焼けるので一度しか使えません。
片面だけ彫って、あて板として石膏ボードなどを用いることもあるようです。
このコウイカの骨を使った鋳造方法では、骨特有のなみなみの縞模様がつきます。
個体差のあるイカの骨の特徴を生かした、唯一無二の作品作りをすると面白いでしょう。
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砂(砂型鋳造)
砂を固めて型を作る、日本では弥生時代から続いていると言われる鋳造方法です。きっと最初は、砂のくぼみに溶かした金属を流し込むという簡単な鋳造方法だったのでしょう。
現在でも、マンホールの蓋とか、いわゆる鋳物と呼ばれる物がこの鋳造方法で作られていることが多いです。
そして、サンドキャスト(砂型鋳造)といえば、インディアンジュエリーが有名ですよね。ナバホ族が得意とする技法の一つで表面に独特のザラつきが出ます。
もう一つ、ナバホの技法に、Tufa Cast もありますね。
Tufa(石灰岩の一種)を利用した鋳造方法で、炭酸カルシウムが主成分の石を削って型を作ります。
鋳造方法については、前述のカトルフィッシュボーン鋳造と同じ要領です。
Sand Casting
・型枠に砂をつめます。
・リングなど硬さのある原型を押し付けるなどして、型を作ります。
・溶かした金属を流し込む道を作ります。
・溶けた金属を流し込みます。型は一度しか使えませんが、焼けた部分の砂以外は再利用できます。原型は、何度も使えるので同じものをいくつも作ることができます。
この砂ですが、いわゆるサラサラの砂ではなく少し粘土に近いイメージです。
一般的には、ベースの珪砂に粘結剤(樹脂)と硬化剤(酸)が入ったものが使われているようですので、専用のものを購入して使用するのが良いでしょう。
また、型枠も木材などで自作することも可能ですが、専用のものを使用したほうが安全で確実かなと思います。
表面に 自然な砂粒のテクスチャーがつきますので、原石(熱に強いもの)を入れ込んだりして、ナチュラルな作品作りをすると面白いでしょう。
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↓アメリカのサイトですが、サンドキャステイング(砂型鋳造)の、HOW TO 動画がわかりやすいです。
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石膏(石膏鋳造)
現在、ジュエリーの鋳造のほとんどが、この石膏を使用した型を使ったものになります。
製品によっては、石膏の合わせ型を用いるものもありますが、ジュエリー制作ではロストワックス鋳造が用いられます。
↓以前、ロストワックス鋳造についてまとめた記事です。
前述の、2つの鋳造型との大きな違いは、合わせ面のない一体鋳造型というところ。
合わせ面での誤差が生じないですし、複雑な形状のものを高い精度で鋳造することができます。
使用する石膏は、ジュエリー鋳造専用の埋没材を使用してください。
普通の石膏とは、強度や耐熱性が違うようです。
Plaster Casting
・混練:石膏を水と混ぜる
・脱泡:石膏内の気泡を抜く
・ワックス原型をセットする
・ステンレスリングをかぶせ、石膏を入れ固める
・脱ロウ:石膏型を、炉に入れて焼き、ワックスを溶かし出す
・焼結:石膏型を炉に入れ、750℃で焼き固める(埋没材の種類によります)
・鋳込み:鋳型の温度をキープしたまま、溶かした金属を流し込む
簡単に説明すると上記の手順なのですが、やはり、いろいろコツとかあります。
混練
混練は、ラバーカップとスパチュラを用い手作業ですることもできますが、腕が疲れますので、お菓子作りのときに使う電動の泡だて器などを工夫して使ってもいいかもしれません。ただ、泡だて器だとスパチュラで練るより空気が入りやすいので、しっかり脱泡しないといけなくなります。
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脱泡
振動させて気泡をぬくものと、真空にして気泡をぬくものがあります。
↓振動させて気泡をぬくもの
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↓真空にして気泡をぬくもの
↓こういった真空脱泡吸引鋳造機もあります
脱泡と石膏型への鋳込み時、どちらもポンプで吸引するので合理的な作りですよね。
↓また、樹脂で造形する方などはこういった脱泡器を使用しているようです
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樹脂用となっているので、樹脂より粘りのある石膏の気泡がどのくらいぬけるかはわかりませんが…
↓中には、真空おひつでレジンの気泡をぬく方もいるようです
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これで、気泡がぬけるのかは定かではありませんが、振動機との合せ技なら効果がありそうな気もする。
もうね、ここまでくると実験ですよね。
そして、みなさんがいろいろ工夫していることに頭が下がります。
脱ロウ
脱ロウ時は、
・急に温度を上げるとワックスが膨張して鋳型の内壁が荒れる
・酸素不足だとワックスが炭化し鋳型内に残り、鋳込み時に燃えて気化しガス鋳巣の原因になる
・鋳型の水分が気化する力で、ワックスを型外へ排出するので乾燥しすぎた鋳型は脱ロウしにくい
・乾燥した時は水に浸けると良いが、鋳型の肌が荒れる
ということがあるようです。
石膏焼結
焼結時は、
・石膏の種類によりますが、数時間かけて温度を上げ、数時間温度をキープする
・温度が上がり過ぎても、ガスが発生し鋳巣の原因になる
脱ロウ・焼結に関しては、温度管理がキモになりますので、やはり電気炉が必要になりますね。
専用の電気炉を使用するのが一番いいでのでしょうが、陶芸用の電気炉を使用している方も多いようです。
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電気炉のサイズ選びは、使用するステンレスリングのサイズ、一度に何個入れるかで変わってきます。
釜のサイズに対して炉内は案外狭いのでサイズ選びは慎重に。
この石膏型ですが、ワックス以外にも、電気炉内で燃えてなくなるもので、焼けるときに有害なガスが発生しないものなら型にできます。
木の実とか枝とか、レースを使う方もいますよね。
こういった現物鋳造は、専門に行なっているところもありますが、大抵の鋳造業者で断られます。自分で鋳造できれば作品づくりの幅が広がりそうですね。
ただ、木の実とか裏抜きしないと重すぎるので、それだったら木の実をシリコンとかで型取りしてワックス流して…ってしたほうがいいんじゃないかと思ったりもする。
今回のまとめ
今回は、ひとまず鋳造に用いる鋳型のお話でした。
いずれにせよ、どれだけ設備や機材にお金をかけるかで、仕上がりに差が出てきますよね。
自分のブランドのテイスト、ビジネスの規模、作業スペースの確保、鋳造にかけられる時間と手間、などは人それぞれですので、どの方法が正解なのかも人それぞれでしょう。
次回は、鋳込み方についてまとめたいと思います。
私の上っ面な知識だけでは心もとないので、
↓鋳造機メーカーさんのHPもご覧いただければと思います
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